九条の大罪 コミックス第1巻 帯 弘中弁護士等について

1 九条の大罪 コミックス第1巻の帯に弘中淳一郎弁護士この漫画を高く評価するコメントがあった。

まあ、私は弘中弁護士とはだいぶ考え方が違う。それはさておき弘中弁護士の弁護活動で敬意を表したいことがあるので、記そうと思う。

弘中弁護士は薬害エイズ事件の関連で、安部医師等の刑事弁護、名誉毀損裁判の代理人などを担当した。(私は薬害エイズ事件の原告被害者(患者)側弁護団員だったので、弘中弁護士とは対立する立場の弁護士だった。)薬害エイズ事件の被害者側(患者側)の弁護団は、組織的に加害者側の刑事事件、名誉毀損裁判などを傍聴をし、かなり大量な証人尋問の記録をとった(裁判を弁護団員が分担して傍聴し、それを文章化して記録を残すという大変な作業)。こういう活動は普通しない。これ以外に私は弁護団がこのような活動をしたと聞いたことはない。

その中で弘中弁護士の証人に対する反対尋問が,なるほどと思うものがかなりあった。一般の方は、反対尋問に、「証人が主尋問で言ったことは違うだう、と問い詰める」、というイメージを持っているかも知れない。ただ、そういう反対尋問をすると、「ちがう、主尋問で言ったとおり」、と否定され、それが尋問調書となり逆に反対尋問をした側に不利な証拠となる。反対尋問は難しい、最良の反対尋問は反対尋問をしないことだ、といわれる位だ。

で、弘中弁護士は、相手が否定できないこと、相手の言ったこと、書いたこと、客観的な事実などを質問し、そのとおり回答させて固めていき、それらの回答からすると、こうではないか、矛盾するじゃないか、という理詰めの詰め方をしていた。その聞き方がとてもうまいな、と感じた。

2 やはり帯に、はあちゅう氏が「依頼人にとって最高の弁護士は正義の味方なんかじゃない」とのコメントをされているので、コメントしたい。

依頼者と弁護士は実は利益が対立することがある。刑事弁護では方針など。刑事弁護ではやはり無罪、有罪でも刑が軽くなりたいというのが,依頼者の欲求だから正義の味方云々はあまり問題にならないかも知れない。

しかし民事事件においては、処理方針の見解の相違、処理に当たっての弁護士のミス、弁護費用等において依頼者と弁護士が対立することがある。その際、弁護士が倫理観が欠如している場合、依頼者が大変被害を受けることがある。弁護士に極めて有利、依頼者に不利采契約書が作られていることがある。

だから、もし私が一般人で弁護士に相談、依頼しようとする場合、事件処理能力ももちろんだが、倫理観がある人間的・誠実な弁護士に頼みたいと思うだろう。やっぱり弁護士は正義の味方であってほしい。

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