相続法改正2

自筆証書遺言の方式緩和について

今回の改正は、自筆証書遺言本文と一体のものとして添付された財産目録について自筆することは要しないとされたことです。

複数の不動産などを有する者が財産目録を作成する場合は、それを自署することは相当大変です。一方で従前、自筆証書遺言は全文自署という要件があり、自署でない目録に依拠する遺言は無効になりました(但し、全文自署という要件には解釈に諸説あります)。

今回の改正で、目録は、パソコンなどによる作成、第三者による代筆、不動産の登記事項証明書・預貯金通帳のコピーなどの添付でも可能となります。一体の物という要件がありますが、綴じよ,という要件ではないので、ホチキスで綴じなくても1つの封筒に入っていて封緘されれば一体のものと評価されます。

あと、目録の各頁への署名押印が必要です。

ここで気になることといえば、目録を添付してホチキスで綴じて、割り印を押した場合はどうかということです。結論的にいえば、割り印は要件を満たしません。但し、割り印の押印部分で大部分が目録部分にかかっていてその部分が独立した押印と評価できるときには要件を満たす押印と評価されるかもしれません。また遺言の有効無効の解釈は,有効にするため柔軟な解釈をする方向で動くことが多いので、割り印も本要件の印鑑と解釈される可能性はあるかもしれません。しかし今の段階で救済されるかも、というわけにはいきません。

また、無効な目録が添付されていた場合はどうなるか。無効な目録は無視して、目録がなくても有効な遺言と評価できるか、ということだと思います。

実は「一体のもの」との要件も疑問があります。封筒に入っていて封筒が綴じられていなかった、あるいは綴じられていたが開封されていた。目録は署名押印はあったが本文にはホチキスなどで綴じられていなかった。といった事案です。事実認定でいろいろ係争の種がありそうです。

まあ、方式の問題、内容の解釈の問題、遺言作成の能力の問題など紛争が起きる可能性が結構あるので、私はできれば自筆証書遺言は避けたほうが良いですよ、とは常々いっています。

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