相続法改正3

自筆証書遺言の保管制度

自筆証書遺言を確実に保管し、相続人などが相続開始後のその存在を容易に把握することが出来るように、自筆証書遺言の保管制度が創設されました。自筆証書遺言は、法律上の要件の不備、紛失、隠匿、変造、遺産分割後に発見されることがあるなどの問題がありました。

一方で、公正証書遺言は公証人が関与するので法律上の要件の不備の問題があまりなく(口授の問題および、遺言能力の問題はあります)、紛失・隠匿・変造の危険もなく、遺言の検索の制度もあるという利点がありました。ただ惜しむらくは費用がそれなりにかかり、公証人日程の関係で直ぐに作成できない,という問題がありました。

今回の保管制度新設は、自筆証書遺言の問題点をある程度改善するものです。

なお、制度の施行は令和2年の7月10日からです。本記載時(令和2年1月20日に、まだ細部を決める法務省令は公表されていないようです。政令はあります。)

この制度は、遺言者本人が保管の申請をします。保管場所は、住所地、本籍地、不動産所在地を管轄する法務局です。自筆証書遺言は画像データで管理されるので、無封でなければいけません。自筆証書遺言とともに作成年月日、氏名、生年月日、住所・本籍、遺言書に受遺者は遺言執行者の記載があるときはこれらの者の氏名・名称及び住所、その他法務省令で定める事項を記載した申請書を提出することになります。

法律上の要件の具備については、法律に「法務省令で定める様式に従って作成」とありますので、民法上の要件の具備については受付段階で確認はされるはずです。画像データで管理されるので、紛失、隠匿、変造の危険もありません。遺言者死亡後は相続人等が検索もできます。費用もまだ明確ではないですが、公正証書遺言よりは安そうですし、法務局に行けば良いので、直ぐに出来ます。家庭裁判所での検認も不要です。

良いことずくめのようですが、弱点もあります。

まず第1は、公正証書遺言のような公証人の出張の制度がないこと。病気などで法務局に行けない人は本制度を利用できません。

第2は、遺言応力があることを保障するものではないこと。公正証書遺言でも遺言応力は問題となりますが、さらに問題となり得ると思います。また付き添いを拒否するわけではないでしょうから、事実上付き添った人が主導した本人の意思をきちんと反映しない遺言が出来る危険があります。

第3は、なりすましの危険があること。公正証書遺言では、公証人が印鑑証明書・実印の持参を求め本人確認をし、証人もいるので、なりすましの危険が低いといえます。少なくとも私はなりすましが問題となった件は経験がありません。一方本制度では、本人確認が写真付きの身分証明書でなくても可能(銀行のように身分証明書類2通)だとしたら、証人もいませんので、なりすまし遺言の危険がややあると思います。

本制度はまだ施行されておらず、法務省令も公表されていないので、後日改めて論じようと思います。


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