終活4-2 任意後見
親の介護とは直接関係ないかも知れないが、最近そこそこ話題になりだしたので、コメントする。
任意後見は判断能力が不十分になった人を支援する仕組みの一つだ。法定後見の類型の「後見」「保佐」「補助」という言葉を聞いたことがある人も結構増えてきた感じがする。
任意後見は
①本人が自ら信頼できる受任者を選び
②どのようなことについて代理権を与えるか自ら決定し
③報酬も柔軟に決定でき(無償も出来る)
④死後事務委任も別途契約して対応できる
という利点が法定後見に比べてあると言われる。公正証書で作成する必要がある。
任意後見契約は親子で締結することはまあ、ない。
3点セットということばがある。財産管理の委任契約、任意後見契約、遺言と3つの契約のことだ。財産管理の委任契約がご本人が判断能力がある段階、任意後見契約はご本人が精神上の障害により判断能力が不十分になった段階。遺言はご本人が亡くなってから。
任意後見契約が発動するには、ご本人の判断能力が低下して(補助程度以上)から家庭裁判所へ申立をし、家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから,という立て付けである。
で、問題はご本人が判断能力が不十分になったとき、3点セットの契約がされていたばあいに財産管理の委任契約の受任者が、任意後見開始の申立てを家裁にしないことだ。任意後見は家裁が選んだ任意後見監督人を通じての家裁の監督がある。しかし財産管理の委任契約のままでは家裁の監督はない。財産管理の委任契約の受任者が悪い気持ちを起こしたときの監督がないのだ。通常はかなり包括的な委任条項となっており、危険と言えば危険だ。まあ、誰か親族がいて家裁に申立をしてくれれば良いのだが。
それから、任意後見人の適切な報酬はいくらか、という問題がある。法定後見の場合は裁判所の一応の基準がある。仕事内容に応じて決められる(弁護士からすると安いなあと思うことも多いけど)。一方任意後見は自由に決められるが、契約締結時に決めなければならないので、将来ある仕事量との対応関係で適切な報酬が決めにくい。
病的な事案と思うのだが、それほどは財産がない親について、親と娘が月額5万円の任意後見契約をしたというケースを聞いたことがある。これに任意後見監督人の報酬があるので(感覚だが裁判所は弁護士が後見監督人になった場合に、月額1万円程度にすることが多いように感じる。)ご本人の負担は結構な金額となる。
それから任意後見人には契約の同意権、取消権がない。
ご本人が浪費的な契約をしたときの取消による保護がしにくい。民法96条の詐欺取消等という手段も考えられるが。
度重なる場合は法定後見の申立をするという方法があるといわれている。